01カレンダーを開いた瞬間に疲れている
来週のカレンダーを開く。予定が4件入っている。それを見た瞬間に、肩のあたりが重くなる。まだ1件も始まっていないのに、もう疲れている。この感覚に覚えがある人は少なくありません。予定そのものが重いのではなく、予定を見た自分の頭が、先に全部を一回ずつ実行してしまっているからです。木曜の打ち合わせを、月曜の夜にもう3回やっている。使ったエネルギーは、現実の打ち合わせのぶんだけではありません。
先回り不安とは、まだ起きていない出来事を想像して、そのときの緊張を今の体で先に味わってしまうことです。心理の分野では予期不安という言い方をすることもあります。やっかいなのは、想像の中の予定が現実よりも重く仕上がる点です。頭は安全側に寄せて計算するので、電車の遅れも、相手の不機嫌も、話が長引く可能性も、全部いちばん悪い値で見積もります。現実の水曜日より、想像の水曜日のほうが常に大変です。
だから、この消耗は「気にしすぎ」で片づくものではありません。実際に体力を使っています。90分の会議に対して、事前の再生を3日間、1日20分ずつやっていれば、合計で1時間分の緊張を余分に払っている計算になります。減らすべきは予定の数だけではなく、この余分に払っているぶんです。そしてそれは、予定の組み方と余白の置き方を変えることで、かなりの部分が動きます。
02先回りが始まる場所を特定する
先回り不安を止めようとするとき、多くの人は「考えないようにする」ところから入ります。ここはほぼ失敗します。考えるのをやめようとした時点で、その予定を一度思い浮かべているからです。私も何度も試して、そのたびに再生の回数が増えました。順番を変えます。止めるのではなく、どこで始まっているかを先に見つける。引き金がわかれば、引き金のほうを動かせます。頭の中身より、目に入るものや机の上のほうが、はるかに手を出しやすい対象です。
実際に多いのは3つです。1つ目はカレンダーの見た目。週表示でブロックが隙間なく並んでいるのを見た瞬間に、内容とは関係なく息が浅くなる。同じ4件でも、間隔が空いた週なら平気だったりします。効いているのは数より、詰まって見えるかどうかです。2つ目は終わりの時刻が決まっていない予定です。「14時から」とだけ書かれた予定が1件あると、そのうしろの時間が全部あいまいになる。頭はあいまいさを放置できないので、終わる時刻のパターンを何通りも並べて検討し始めます。
3つ目は、相手の反応が読めない予定です。会う相手の機嫌、話の流れ、断られるかどうか。読めないものほど、頭は先に読もうとします。人と会う予定が2件並んだ日の前夜に眠りが浅くなるのは、この働きが夜まで続いているからです。逆に、内容が決まっている作業だけの日は、件数が同じでも前夜が静かになります。数ではなく、読めなさの量が効いています。
特定のしかたは単純です。3日間、不安が立ち上がった時刻と、その直前に見ていたものをメモに残します。スマホのメモで構いません。「21時、カレンダーの週表示」「朝、未読のメッセージ」。3日ぶん並べると、自分の引き金は2つか3つに絞れます。全部の不安に対処する必要はなく、この2つか3つに手を打てば十分です。
03予定の組み方を4つ変える
1つ目は、1日に入れる「頭を使う予定」を2件までにすることです。頭を使う予定とは、人と話す、その場で判断する、初めての場所に行く、のいずれかを含むもの。買い物や事務作業、通院はここに数えません。3件目が来たら翌週に回します。2件で足りない時期はもちろんありますが、上限を決めておくと、増えたときに自分で気づけるようになります。
2つ目は、移動と復帰の時間を足して1件と数えることです。90分の打ち合わせは90分ではありません。往復の移動が60分、終わったあとに頭が戻るまでが30分。合わせて3時間です。カレンダーにも3時間で入れます。実際にはこの復帰の30分がいちばん軽視されていて、ここに次の予定を入れた日に消耗が跳ね上がります。
3つ目は、終わりの時刻を必ず書くことです。「14:00〜」ではなく「14:00〜15:00」。相手に伝えなくてもかまいません。自分のカレンダーの上だけでも終わりが決まっていると、そのうしろの時間の計算が止まります。引き金の2つ目に直接効く手当てです。実際には延びる日もありますが、延びたと判断できること自体が助けになります。終わりが書かれていない予定は、延びたかどうかすら判定できません。
4つ目は、仮の予定と確定した予定を分けること。色を変えるか、別のカレンダーに置くか、どちらでも構いません。頭は仮の予定も確定として数えてしまうので、「まだ決まっていない打ち合わせ」が3件あるだけで、確定3件と同じ重さになります。見た目で区別がつけば、この水増しは減ります。週の初めに1分だけ、仮のまま残っているものを見直して、消えたものを削る時間を取ってください。
04余白は先に置く
余白は、予定を入れたあとに残るものではありません。残り物として扱うと必ず消えます。空いている時間は、誰かの依頼にとっては空席に見えるからです。先に入れておくものとして考えます。順番としては、余白をカレンダーに入れてから、その隙間に予定を置く。逆にすると、余白はいつまでも生まれません。ここは意識の話ではなく、単純に入力の順番の話です。
置き方は3つあります。1つ目は、予定の後ろに15分。この15分には何も入れません。スマホも見ません。座って、飲み物を一口飲んで、終わったことを終わったことにする時間です。短いので守りやすく、ここがあるだけで次の予定への持ち越しが減ります。2つ目は、週に半日の白紙。金曜の午後でも日曜の午前でもかまいません。誘われたら「予定があります」と答えて構いません。実際に予定として入っています。
3つ目は、人と会った日の帰宅後30分です。玄関で上着を脱ぎ、座り、温かいものを飲み、カレンダーを見ない。人と会うと、相手の話し方や表情がしばらく頭の中に残ります。この30分は、それが薄れるのを待つ時間です。ここでスマホを開いて明日の予定を確認すると、今日の残りと明日の先回りが同時に立ち上がります。夜の消耗が大きい人は、まずこの30分だけ試してみてください。
余白は削られやすい枠です。急な依頼が入ったとき、真っ先に差し出されるのがここになります。それを防ぐために、余白にも名前をつけておきます。「復帰」「白紙」でも構いません。名前のついた枠は、名前のない空白より少しだけ守られます。人に見せるカレンダーであれば、なおさら効きます。空欄は誘われますが、何か書いてある枠は一度立ち止まってもらえます。
054つの門で自分の反応を読む
Spiritualsでは、消耗の入り口を4つの門として整理しています。心門は人の感情をもらって消耗するところ、智門は考えすぎと情報の多さ、気門は音や光といった感覚の刺激、時門は時間と予定に追われる感覚です。ここまで書いてきた予定の話は、多くが時門にあたります。予定の密度そのものが負荷になる人は、枠の取り方と余白の置き方が最初の一手になります。
ただ、先回り不安が時門だけで起きていることは、実はそう多くありません。智門が重なると、シミュレーションが止まらなくなります。予定は2件しかないのに、その2件について何通りも展開を検討している状態です。この場合は枠を減らしても不安の総量が減らないので、頭の中身を紙に出すほうが先になります。心門が重なると、相手がどう感じるかの予測に消耗が集中します。予定の数より、人と会う予定の間隔のほうを空けるべき状態です。
同じ「予定が詰まると不安になる」でも、時門が主なのか、智門や心門が絡んでいるのかで打ち手が変わります。枠を減らしても楽にならなかった人は、減らす場所を間違えていただけということもあります。自分がどこで消耗しているかがわかると、試す順番を間違えにくくなります。無料のセルフチェックで、自分の門と消耗のパターンを確かめてみてください。
なお、この記事は医療行為ではありません。眠れない日が続く、動悸が続く、日常生活に支障が出ているといった場合は、ここに書いた工夫よりも先に、医療機関や専門の相談窓口に相談してください。予定の組み方でどうにかする話と、専門家に見てもらう話は別のものとして扱ってください。順番を入れ替えないことが、いちばんの安全策になります。